工場における暑さと作業パフォーマンス

工場・倉庫などでは、作業自体が長時間の継続的な身体的負荷を含むこともあり,夏季における高温・高湿環境が及ぼす影響は大きいとされています。昨今、熱中症が大きな問題となり,作業管理の指針も発表されているのに対し,高温・高湿環境によるヒューマンエラーの防止対策はほとんどなされていません。

一般に,我々は夏の暑い時季に仕事への意欲やパフ ォーマンスが低下することを感じることがあります。暑さのために意識が低下して災害につながることもあると考えられる。実験室レベルの研究では,高温環境下で,作業パフォーマンスが低下することが知られています。しかし,暑熱環境が事故やエラーの直接原因とは見なされないために,その影響については十分な解明がなされてきませんでした。

そこで、本日は産業安全研究所が行った実験結果報告より抜粋の上、実験結果にフォーカスしてご紹介させていただきます。※産業安全研究所の報告書はこちら

環境温度の違いによる作業パフォーマンス実験結果

実験結果のまとめより抜粋

恒温恒湿実験室における異なる温度条件下(23℃, 29℃,35℃)での作業実験から下記のことが明らかになった。

1)周囲からの情報を聞き逃してしまうエラーが温度

が上がるにつれ,また作業時間が長くなるにつれ多くなる。

2)心拍数は温度が高いほど増加する。また,23℃,29℃条件ではほぼ一定のペースで推移するが, 35℃条件では作業の終了まで増加し続ける。

3)深部体温は作業開始からしばらくは3条件間に差が見られないが,時間が経過するにつれ,どの温度条件においても上昇し,さらに条件間の差が大きくなる。

4)これらの変動傾向は個人や指標により異なり,指標間の関連は高いとは言えない。そのため,作業中にエラーが発生する危険性を客観的な作業状況や本人の疲労自覚のみから予測することは困難である。

以上の結果から,建設現場において,夏季には,暑さによる作業パフォーマンスの低下が予想され,事故に至る可能性もある。そのため,夏季の建設作業では,現場レベルでは休憩室の完備など,作業員レベルでは短い時間でも頻繁に休憩を取ることと,平素より健康に気を遣うこと等の組織的な対策が,暑さが原因とな って発生する事故の防止に必要であると考えられる。

よく読まれている記事

  1. 1

    6月1日より職場の熱中症対策が罰則付きで義務化

  2. 2

    株式会社エムエスジャパン様(埼玉県)

関連記事